~消滅時効の援用で失敗しないために知っておきたいこと~
近年では、離婚率も高くなり、養育費問題で揉めている夫婦も少なくありません。失業・減給・天災被災者になるなど支払いを滞納している方も多いのではないでしょうか。
また、受け取る側としては、期待していた養育費を払ってもらえず、子育てに支障をきたしている方もいるはずです。
ここでは、養育費が支払えなくなるとどうなるのか、また時効はあるのかについて紹介します。
養育費の不払いは犯罪に問われる心配はありませんが、別れた夫婦間のトラブルに発展しがちです。
また、処罰はないにしても間接的・部分的にはペナルティが課せられるので注意が必要です。
養育費の支払いが滞るとどのようになるのか、段階的に解説します。
養育費の支払いが滞ったら、まず当事者同士で話し合いがもたれるケースが多く見られます。電話やメールで連絡をとり、支払いが滞っている旨を伝えた上で、養育費について話し合いがもたれます。
養育費の支払いに関して合意が得られたら、再び滞納が起きないように、署名・捺印した書面を証拠として残しておくべきです。
万が一、話し合いに折り合いがつかない場合は、内容証明郵便で請求されるケースも考えられます。内容証明郵便が届くと、これまでの養育費の支払い有無に関係なく、支払い義務が生じます。
もし、支払っていない期間があれば、その分を一括請求される可能性も高いと考えておいた方がいいでしょう。
当事者同士の話し合いで折り合いがつかず、なんの解決にも導けなかった場合は、家庭裁判所に持ち込まれます。
請求者は、養育費の調停申し立てを行い、裁判所を介した話し合いが開始されます。
養育費の調停は、請求者側だけでなく支払い側からの申し出も可能です。例えば、請求者である母親から過大な額の請求があった場合、支払い者である父親が不服申し立てをするといった具合です。
さらに養育費の支払いがない場合は、家庭裁判所にて履行勧告の手続きがとられる可能性があります。履行勧告の手続きがとられると、家庭裁判所から支払い勧告が、文書と電話で行われます。
ただし、履行勧告には執行力はありません。
一方、履行命令の申し立ての手続きをとられると、裁判所より支払う側に対して未払い分の養育費を支払うよう審判が下されます。
正当な理由がない限り従わなければならず、無視すると10万円以下の過料が課せられるため、注意が必要です。
養育費の未払いが最終局面を迎えると、給与の差し押さえなどの強制執行が行われます。強制執行のための債務名義と呼ばれる書類が整えば、預金・不動産などを差し押さえ換金が可能です。
また、給与の差し押さえをするケースも多く見られます。
一般的には給与の差し押さえは4分の1までとされていますが、養育費に関しては2分の1が差し押さえられるため、理解しておかなければなりません。
また、未払い分だけでなく、将来的に支払う義務のある分も差し押さえられるのが通例です。
給与の差し押さえが実施されると、職場にも養育費を滞納しているとバレるため、悪い印象を持たれがちです。次第に居心地が悪くなり、退職に追い込まれるケースも少なくありません。
理由次第では、養育費の支払い義務がなくなるケースがあります。ただし、正当な理由が生じても、自動的に義務がなくなるわけではありません。
必ず減額や免除の交渉をする必要があるので、理解しておきましょう。
ここでは、養育費の支払い義務がなくなるケースについて紹介します。
養育費を受け取る側である親が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をすれば、扶養義務は再婚相手に移り、養育費の支払い義務は減額か、消滅します。
万が一、再婚相手に収入や資産がない場合は、引き続き養育費の支払い義務は残り、扶養義務は消えません。
そのため、親権を持っている親が再婚する際は、再度養育費の計算をし直す必要が生じます。
また、再婚はしても子どもとの養子縁組はしない場合は、養育費の支払い義務は継続されます。
養育費を支払うべき側の親の収入が極めて低かったり、預貯金がなかったりすると支払い義務はなくなります。
しかし、働けるのにあえて働かず、無収入や低収入の状態に甘んじている場合は、年齢や学歴から平均年収を割り出し、養育費が算出されます。
一方で、病気などの理由で働ける状態にない場合は、養育費はゼロか、それに近い金額になると覚えておきましょう。
また、離婚した当時は養育費を払える状態であったのが、状況が悪化し、収入が減った場合は、養育費の減額が請求できます。
養育費を受け取る側から「支払わなくていい」といわれた場合は、養育費の請求はしないとの合意が得られたと見なされ、養育費の支払い義務はありません。
支払い義務がないといわれた際も口約束ではなく、必ず書面にて記録を残しておく必要があります。再度請求があった際は、残しておいた書面が証拠となり、支払い義務はないままです。
しかし、書面を残しておいても事情の変化などで合意を維持できなくなった場合は、合意の変更が可能です。
合意が変更される理由としては「当時は十分な収入があったのに、病気などの理由により収入が激減した」などが考えられます。
養育費は、夫婦間で取り決めをしている場合は、過去の養育費に関しても請求できますが、時効が成立すると請求はできません。
ここでは、養育費の時効について紹介します。
離婚時に養育費についての取り決めをしていたのにもかかわらず、養育費が支払われない場合、基本的に時効は5年と定められています。
最後の支払日の翌日からカウントがスタートし、5年が経過すると、未払いの養育費は請求できません。
ただし、養育費の取り決め方を「離婚協議書」や「公正証書」に書面として残している場合の時効期間は5年です。
養育費の取り決めを裁判所の手続きによって行なっている場合は、時効期間は10年です。
これは民法によって定められており、裁判所が確定した判決や確定判決を同じ効力を持つ調停調書・審判書で決定した権利は、時効期間が10年とするといった規定があるためです。
時効期間が10年となるのは、すでに支払い期日を迎えている過去の未払い分の養育費に限ります。今後支払いが発生するであろう養育費に対しては、時効期間は5年となります。
離婚する際に養育費の支払いに関して、何の取り決めもしていなかった方もいるのではないでしょうか。
しかし、子どもが経済的に自立するまでの養育費は、いつでも請求可能です。
ただし、過去に遡って養育費の請求はできないため、なるべく早く請求する必要があります。
養育費の時効が迫っている場合、受け取り側の対処法としては、時効の中断があります。
時効の中断に持ち込むためには、いくつかの条件があるため、紹介します。
支払う側が、養育費の存在を承認した場合、時効はストップします。養育費の請求をした際に、「来月には支払う」「もう少し待ってほしい」などと対応した場合、債務承認がなされたと見なされます。
また、養育費の一部が支払われても、債務承認となるため、注意してください。
養育費を受け取る側が、裁判所を介して請求をする、つまり裁判を起こすと時効はリセットされます。
時効期間は、裁判の判決確定後から時効期間がスタートします。また、裁判所に調停や支払督促の申し立てをしても同様です。
時効が近い場合に裁判をする時間がなかったり、裁判費用がなかったりする場合には、勧告すれば時効を6ヶ月延期できます。
勧告とは、裁判所を介さない訴えのため、費用はかかりません。
裁判所により養育費の支払いが決定するまでの間、支払う側が財産を隠したり、処分したりしないよう財産の仮押さえが可能です。仮押さえをすると時効は6ヶ月延期となります。
裁判所から養育費の支払いが決定されたにもかかわらず、支払いがされない場合は、支払う側の財産を差し押さえて強制的に養育費として支払わせる方法があります。
差し押さえの強制執行を行うと、時効はリセットされ、時効の完成までには再度5年間が必要です。
養育費は時効を迎えても、支払う側が時効援用の手続きをしなければ時効は完成しません。手続きは「時効援用通知書」を準備し、時効が完成している旨の主張を書きます。
「時効援用通知書」は、内容証明郵便で郵送し、養育費を受け取る側が受け取れば、受け取った連絡がくるはずです。
時効援用の手続きは、自分で行えますが、時効期間の5年間が確実に経過しているかどうか不安な方は、弁護士や司法書士に相談してください。
時効援用の手続きが完了すると、養育費の支払い義務はなくなり、受け取る側は未払い分の養育費の請求ができません。
自分で時効援用の手続きをする場合は、約2,000円程度です。内訳としては、一般書留・内容証明・配達証明料・速達料金などです。
一方、専門家である弁護士や司法書士に依頼すると、費用は約4〜10万円といわれています。
高額に思えますが、時効援用の手続きに不備があると、裁判に持ち込まれる可能性が高まります。確実に手続きを完了するためには、決して高くはありません
。代表弁護士:田中 健太郎 先生
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