~消滅時効の援用で失敗しないために知っておきたいこと~
借金問題を抱えている人の中には、お金がなくて生活保護を受けている人もいるでしょう。そのため、生活保護受給者でも債務の消滅時効を援用できるのかどうかは気になるところです。ここでは生活保護と時効の援用について解説します。
生活保護を受けながら時効の援用を目指すことは不可能でありません。しかし、実際には様々な問題やハードルが存在することも事実です。
そもそも生活保護は失職や病気など様々な事情で十分な収入がなく、国民として健康で文化的な最低限の生活を送ることが困難な人に対して、国や自治体が生活に必要な費用を支給してくれる社会保障制度です。言い換えれば、生活保護を受けなければならない状態の人はお金に余裕がなく、当然に借金を返済していくことも困難でしょう。
そのため生活保護受給者の中には返済を放置しており、結果として時効援用できる可能性があります。
一方、債権者の中には生活保護受給者に対して「返済を停止する」という条件を提示する代わりに、定期的な書面提出や意思確認で消滅時効を中断・延長させるといったケースもあります。
前提として生活保護の受給者はそもそも生活が困窮状態にあり、借金問題についても弁護士などへ相談するためのお金がないというケースは少なくありません。そのため、生活保護受給者の中には借金問題などを誰にも相談できずに一人で抱えているといったことも多々あります。
国はそのような問題に対して「法テラス」という法律相談サービスを運営しており、生活保護受給者は法テラスへ費用負担なく法律相談をすることが可能です。
法テラスは正式名称を「日本司法支援センター」と呼び、総合法律支援法にもとづいて法務省が所管する国の事業です。
法テラスは日本全国に相談窓口を設けており、訴訟費用や法律相談の費用を用意できない人などのために多角的なサポートを行っています。そのため弁護士へ相談したり司法書士へ依頼したりする費用がない人や、ひとまず無料で専門家へ相談したい人などは、法テラスを利用して方向性を考えることが可能です。
法テラスを利用して司法手続きなどを行う場合、その手続きの費用や弁護士費用を法テラスが立て替えてくれたり、その支払いを免除されたりといった制度も存在します。
例えば生活保護受給者の場合、以下の全ての要件に該当する人であれば、法テラスの免除制度を受けられる可能性があります。
なお、上記の要件はあくまでも法テラスの免除制度を受けるための条件であり、生活保護受給者だからといって必ずしも免除制度を受けられるとは限らない点に注意してください。
生活保護受給者でも借金の時効の援用はできるものの、実際には生活保護受給者が借金問題の解決について考える場合、消滅時効の援用を考えるよりも「自己破産」を検討した方が良いケースは少なくないでしょう。
生活保護とは、生活保護法によって規定されている社会保障制度であり、日本国憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活を保障する」ための制度です。
また、生活保護は単に生活困窮者へお金を提供するだけでなく、それぞれの受給者の状況や事情を鑑みつつ、改めて社会での自立した生活を送れるようにサポートしていくことも含みます。
生活保護を受ける場合、そもそも自分や家族の生活費などを本人がまかなえない状況になっていることが前提となり、基本的に資産や財産を所有している人は生活保護を受けることができません。また生活保護費は生活を維持するためのお金であり、そのお金を使って借金を返済することもNGです。
自己破産とは、債務者として支払不能であることを裁判所へ申し立てて、借金の支払いを公的に免除してもらう制度です。
まず、生活保護を受けなければならない生活状態になっている人にとって、根本的に借金を返済していくといったことは困難です。また仕事をしてお金を稼いでも、それはまず生活費として充てられるべきであり、仕事で稼いだお金があれば生活保護費と相殺して保護費が減額されます。そのため生活保護を受給しながら、仕事で稼いだお金で借金を返すといったことはできません。
そのため生活保護受給者が借金問題を抱えている場合、基本的に支払不能な状態にあるとして、自己破産による解決を目指していくこととなるでしょう。
自己破産と時効援用は、どちらも成立すれば「借金を返さなくて良い」という点で同じです。しかし両者には大きな違いがあり、それぞれに様々なメリット・デメリットがあることも理解しておかなければなりません。
自己破産は、原則的には現在抱えている借金を全て免除される制度です。税金の滞納など自己破産でも免除されないお金はありますが、一般的な借金であれば消滅時効が訪れていない債務でも帳消しにできる上、複数の債権者から借金をしていてもまとめて債務が消滅します。
また自己破産をしても生活に必要な最低限の現金などを手元に残せるため、無一文で生活しなければならないということもありません。
反面、自己破産は借金の理由などによって必ずしも認められるとは限らない上、自己破産をした人は信用情報機関へ事故情報が登録されてしまい、破産後はクレジットカードの契約や携帯電話の契約などが困難になります。
時効援用は自己破産と違って、成立後も生活の根本へ大きな悪影響を及ぼしません。そのため時効援用の後で生活を立て直しやすく、また自分の財産や資産を手放す必要もない点がメリットです。
反面、そもそも消滅時効を援用するまで時間がかかる上、債権者との交渉などによっては時効が延長されて援用できないといった場合もあり得ます。
現時点で生活保護を受給していたとしても、今後に生活を立て直して自立しようとしている人は多いでしょう。そのような人にとって、信用情報機関へ事故情報が登録される自己破産より、時効援用によって借金問題を解決できるのであればその方が無難です。
生活保護を受給中の人が、民間企業Aからの借金残額160万円について、法テラスの免除制度を活用しつつ時効援用を実現した事例です。
生活保護を受給していた相談者は、およそ10年前の借金(債務)について裁判所から民間企業Aを原告とする訴状を受け取り、どうすれば良いのかと悩んで法テラスへ相談しました。
法テラスを通して弁護士事務所へ手続きを依頼し、債権者である民間企業から譲受債権請求がなされていなかったことを踏まえて答弁書を作成し、最終弁済から長期間が経過していたことを理由として時効援用による債権消滅を主張しました。
その結果、民間企業による訴訟が取り下げられ、また改めて時効援用通知を送付したことで時効の援用により債務が消滅したそうです。加えて相談者は生活保護受給者として法テラスの免除制度の要件を満たしており、弁護士費用なども自己負担も必要ありませんでした。
生活保護を受給している人が借金を抱えていて、最後の返済から相当の時間が経過している場合、消滅時効の援用で債務を解消できる可能性があります。しかし、そもそも生活保護受給者は経済的に困窮状態にあり、プロへ気軽に相談しにくい人も多いでしょう。
そのような場合、国が運営している無料の法律相談サービス「法テラス」を活用して、免除制度の適用も踏まえながら信頼できる弁護士などの専門家へ相談し、問題解決を目指していくことがおすすめです。
代表弁護士:田中 健太郎 先生
法律相談件数が20,000件を超える実績(2023年8月時点)がある東京スカイ法律事務所では、【借金問題の相談無料】という相談者にとって非常に助かるサービスを提供しています。
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