~消滅時効の援用で失敗しないために知っておきたいこと~
借金を滞納していて、元金や利息さえ用意していれば完済できると思っている人は注意が必要です。借金を滞納すると遅延損害金と呼ばれるものが発生し、元金や利息とは別に支払わなければいけません。ここでは、遅延損害金とはどういったものなのかをはじめ、発生するタイミングや支払い義務、デメリット、支払えない場合の対処法などを解説します。
遅延損害金とは借金の返済が遅れた場合に発生する損害賠償金のことで、いわば約束した期日までに借金を返さないことへのペナルティのようなものです。遅延損害金については契約内容に記載されている場合が多く、たとえ契約内容に盛り込まれていなかったとしても民法で認められているため、貸主は遅延損害金を請求することができます。
遅延損害金は滞納が始まった日、つまり返済期日の翌日から発生します。元金や利息に上乗せされて請求されるため、滞納すればするほど借金がどんどん膨らんでしまうことに。遅延損害金の支払い期日は貸主によって異なりますが、遅延損害金が発生した翌々月以降になるケースが多いようです。
銀行や消費者金融などから借入れした場合、契約書で返済の滞納に対して遅延損害金を支払うことに同意していることがほとんどです。そのため、返済を滞納すればペナルティとして遅延損害金の支払い義務が発生します。また、民法第412条に遅延損害金の履行期や履行延滞に関する規定があることから、法律的に見ても遅延損害金の支払い義務は生じると考えられます。
遅延損害金は遅延利息や延滞利息とも呼ばれますが、利息(金利)とは別のものです。遅延損害金が返済の滞納によって発生するのに対し、利息は滞納の有無に関係なく発生します。利息は借入金の元金にのみ発生するものなので、遅延損害金に対して利息が請求されることはありません。
利息の利率は「利息制限法」「出資法」で上限が定められており、最大上限は20%です。
遅延損害金も利息制限法による規制は受けるものの、利息よりも高い利率に設定されている傾向にあり。理由としては遅延損害金はペナルティとしての側面が大きく、高利率に設定することで滞納を防ぐ目的があるためです。
貸金業者が遅延損害金の利率を定めていない場合、法定利率である3%の遅延損害金を支払う必要があります。
遅延損害金は利息とは別に発生するため、支払い総額の負担がその分大きくなってしまいます。特に遅延損害金は高利率に設定されていることが多く、本来であれば元金と利息の返済だけで済んでいたものが、滞納によって高額な請求につながる可能性があるので注意が必要です。
返済を滞納すると、信用情報機関に事故情報として登録されます。いわゆるブラックリスト入りです。ブラックリストに載るとどのようなデメリットがあるかというと、新規借入れやクレジットカードの発行、ローンなどの審査に通りにくくなってしまいます。
なぜなら金融機関やクレジットカード会社などが貸付を行なう際、支払い能力があるかどうかを判断するために信用情報機関に登録されている情報を確認するためです。スマートフォンやタブレットなどの分割払いを希望する際も信用情報機関の情報が参照されるので、ブラックリストに載ると不便な思いをすることが多くなってしまいます。
借金を滞納していると、債権者から電話や郵便などで返済を求める督促が行なわれるようになります。返済が難しいからと督促を無視し続けた場合、債権者から裁判を起こされる可能性もあり。裁判を起こされてしまうと一括で返済を求められたり、強制執行によって財産を差し押さえられたりといったリスクがあります。
差し押さえられる財産には預貯金や不動産、自動車などのほかに、給料も対象です。給料が差し押さえられると勤務先に通知が行き、借金を滞納している事実が知られる可能性もあります。自宅や社会的信用を失ってしまう恐れがあるため、裁判を起こされる前に対処しましょう。
遅延損害金の利率は利息制限法によって規定されており、上限利率は利息の1.46倍です。ただし、この上限利率が適用されるのは銀行やクレジットカード会社などの金融機関のみで、消費者金融からの借入れの場合は最大20%と定められています。
消費者金融から20%を超える遅延損害金を請求された場合、上限利率を超えた部分は無効にすることができます。すでに支払っていて残っている元本に充当しても超過分があれば、過払い金として債権者に請求することが可能です。
※参照元:アディーレ法律事務所 Lega-Life Lab
(https://www.adire.jp/lega-life-lab/interest-rate-restriction-act-delayed-damage368/)
遅延損害金がいくらになるのかは、「借入金残高×遅延損害金利率×延滞日数÷365日」で計算できます。また、一括返済・分割返済のどちらを選ぶかで計算式が少し異なり、それぞれの計算式は次の通りです。
【一括で返済する場合】
例:借入額80万円、遅延損害金の利率20%、滞納日数30日
80万円×20%×30日÷365日=13,150円
【分割で返済する場合】
例:毎月の返済額10万円、遅延損害金の利率20%、滞納日数50日(約2ヶ月)
(10万円×20%×30日÷365日)+(20万円×20%×20日÷365日)=3,834円
分割での返済で滞納が続いている場合は上記のように計算式が複雑になり、1ヶ月目と2ヶ月目の2つの計算式を合わせて算出します。1ヶ月目は返済額10万円に対して遅延損害金を算出しますが、2ヶ月目は2ヶ月分の20万円に対して遅延損害金が発生。このように滞納日数が増えれば増えるほど、遅延損害金もどんどん膨らんでいくことが分かります。
遅延損害金を発生させないようにするためには、返済期日をしっかりと把握しておくことが大切です。ただ、借入先が1社や2社であれば返済期日を把握しやすいですが、3社以上となると返済期日の管理が難しくなり、返済漏れのリスクも高まります。
返済期日を把握できるか不安、もしくは返済漏れで何度か遅延損害金を発生させてしまっているという人には、複数の借入れを一本化する「おまとめローン」の検討をおすすめします。おまとめローンとは多重債務に悩む人向けの商品で、1社から融資を受けて現在の借入れを完済し、その後は返済先を1社に一本化するというもの。返済の管理がしやすくなり、金利が下がって毎月の負担額を抑えられる可能性があります。
返済期日までに支払いが難しいと感じたら、借入先へ相談してみることをおすすめします。債権者によっては返済に関する相談窓口を設けており、返済期日の延長や返済計画の見直しなどに対応してもらえる可能性があります。滞納している状態だと相談に応じてもらえないこともあるため、返済期日を迎える前に連絡してみましょう。
病気や怪我などの事情で収入が一時的に減少し、返済が難しくなることもあるでしょう。ただ、あくまでも一時的なもので、その後の返済が可能なのであれば、借入先に最低限の金額だけを返済する最低弁済の相談をしてみることをおすすめします。遅延損害金を請求するかは貸主の意向次第になるため、あらかじめ借入先に相談して返済計画を提示することで、遅延損害金を請求されない可能性があります。
住宅ローンを滞納しているのであれば、任意売却という選択肢もあります。任意売却とは住宅ローンの残っている不動産を売却し、その売却金でローンを返済する方法です。ただし、任意売却は債務者が自由に行なえるものではなく、ローンの債権者である金融機関の同意を得なければいけません。
任意売却のメリットとしては、住宅ローンを支払えずに差し押さえになってしまい、不利な条件で競売にかけられるよりも高く売却できる可能性があること。そのため、競売にかけられる前に、金融機関に相談する必要があります。
長期間返済していなかった、またはずっと連絡がなかったのに返済請求がきた借金の場合、時効が成立しているか確認しましょう。借金には時効があり、条件をクリアして時効の援用と呼ばれる手続きを行なえば、消滅時効の制度によって借金の返済義務をなくすことができます。
借金の時効の期間は、金融機関からの借入れであれば最後に借金を支払ってから5年以上経っていれば成立している可能性があります(※)。ただし、借金の時効の成立にはさまざまな条件があり、それらをクリアしていないと借金の時効を主張することはできません。時効の援用の手続きは自力でも行なえますが、失敗するリスクもあるため、安全かつ確実に進めるのであれば借金問題に詳しい弁護士や司法書士などの法律の専門家を頼るのがおすすめです。
※参照元:司法書士法人ひびきグループ公式HP(https://saimuseiri-kabarai.net/債務整理/借金は5年で時効により消滅する/)
借金の時効が成立しておらず、それでいて支払いも難しい場合、債務整理という救済手段があります。
債務整理とは、借金を減額したり、支払いに猶予を持たせたりする手続きのことで、「任意整理」「民事再生」「自己破産」といった選択肢があり。それぞれでメリット・デメリットが異なるため、どの手段が自分に合っているかどうかを知りたい場合は、弁護士に相談することでアドバイスを受けることができます。
借金は放置していても解決することはなく、むしろ利息や遅延損害金の発生によってどんどん膨らむばかりです。借金のある生活から解放されたいのであれば、1人で悩まずに、しかるべき機関に相談してみましょう。
代表弁護士:田中 健太郎 先生
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