~消滅時効の援用で失敗しないために知っておきたいこと~
他人の借金に関して物上保証人となっていた人でも、条件が整えば時効の援用を使うことは可能です。ただし物上保証人が時効援用をできるかどうかについては注意点もあり、実際にはあらかじめ正しい知識を備えておかなければなりません。
結論からいえば、「物上保証人」も債務について消滅時効を援用することが可能です。
そもそも借金の消滅時効を援用できる人は、債権が時効で消滅することによって「直接利益を受ける人」に限定されています。一方、物上保証人は自分自身で直接に借金をしている人ではないものの、他人の借金のために自分の家や土地といった資産を担保として提出している人です。つまり、他人の借金がなくなればそれらの担保を失うこともないため、物上保証人は当事者として直接な利益に関係している人であると見なされます。
以上の理由から、物上保証人であっても時効の援用は適用されます。ただし物上保証人が時効援用をできるかどうかは、様々な条件をあらかじめチェックしなければなりません。
物上保証人とは「他人の借金のために、自分の家や土地といった所有物件などの財産を担保として提供した人」です。そのため、例えば借金をしている人がその返済をできなくなった場合、物上保証人は抵当権をつけた不動産や財産を手放すか、また被担保債権を物上保証人が自ら返済して抵当権の消滅を目指すといった流れになります。
他人の借金を肩代わりするという点において、物上保証人と連帯保証人が混同されることもあります。
連帯保証人とは文字通り他人の借金(債務)に関して連帯的な責任を負っている保証人であり、他人が借金を返せなくなれば、債権者は連帯保証人に対して借金の返済を求めることが可能です。そのため例えば友人の借金の連帯保証人になった場合、友人が返済できなくなれば、連帯保証人である自分が残額について債務を負わなければなりません。
一方、物上保証人は財産を担保として提供している人であり、例えば友人の借金5千万円のために物上保証人として自分の自宅(3千万円相当)に抵当権をつけている場合、友人が借金を返せなくなれば担保である自宅を手放す必要が生じます。しかし、担保である自宅を手放した後は、仮に自宅の資産価値で借金の全額をカバーできずとも、残額相当の2千万円を返済する義務はありません。
日本の司法判断として、物上保証人も他人の借金について直接的な利害関係にある当事者であり、債務の消滅時効を援用することは可能となっています。ただし、それは前提として消滅時効を迎えていることが必要であり、そもそも時効期間がどのようになっているのか最初に確認しておかなければなりません。
当然ながら消滅時効期間を過ぎていないうちに時効援用をすることは不可能です。
借金をした日から起算して、すでに時効を迎えていると判断して時効援用を目指す場合もあるでしょう。しかし、そもそも時効は訴訟を提起された時点でストップしてしまうため、例えば借金をした本人である主債務者がすでに債権者から訴訟を起こされているような場合、物上保証人は時効援用を行うことができません。
またすでに訴訟が終了していても、その訴訟結果が敗訴であった場合、時効は判決確定日から改めてリスタートとなるため、最初の借金をした日から数えて時効を迎えていたとしても、実際にはまだ時効援用できないといったケースもあるでしょう。
債務者自身も自分が訴訟を起こされていると知らないこともあり、いずれにしても時効期間の確認と訴訟の有無は要チェックです。
物上保証人や主債務者が債権者と直接に連絡を取ったり交渉したりした場合、その発言の内容によって「時効の更新」と見なされてしまうことがあります。
借金をしているという立場や、債権者に対してお金を返さなければならないといった立場で交渉の場にのぞんだ場合、様々な不安やストレスから悪気なくリスキーな発言をしてしまったり、その場を丸く収めようと返済スケジュールや返済方法などについて話をしたりすることもあるでしょう。
しかし、いつまでに支払いますと明確な発言をしたり、自分の担保で借金をまかないますといった旨を伝えてしまったりした場合、その時点で「債務を承認した」として時効がリセットされるかもしれません。
主債務者だけでなく連帯保証人などが他にいる場合、債権者と連帯保証人などがすでに何かしらの交渉や話し合いをしている可能性もあります。また今後、債権者が連帯保証人など他の関係者へ連絡を取ることも考えられるでしょう。
もし他の連帯保証人や関係者が迂闊な発言をして時効の更新やリセットが適用されてしまった場合、物上保証人として消滅時効を援用できなくなる恐れがあります。
そのため連帯保証人など関係者へ連絡を取り、今後の対応について専門家のサポートを受けながら冷静に話し合うことが必要です。
主債務者である知人が債権者に対して借金の支払いを認めてしまったために、物上保証人が担保として提供した山林を手放さなければならなくなったという事例です。
そもそも事業資金を必要としていた知人の銀行融資を成立させるため、不動産として所有している山林を担保として提供し物上保証人となりました。しかしその後に知人の事業が失敗したと聞いたものの音沙汰がなくそのままにしていた所、突然に山林が競売にかけられると連絡があったそうです。
しかも時効に関しては知人が主債務者として返済を承認しており、それが時効の中断事由となって時効の援用ができませんでした。
このように主債務者の行動で物上保証人が担保を失うリスクがあります。
物上保証人は自らが借金をしている主債務者でなく、日頃から返済などを行うこともないため、借金の詳細や返済状況などについて情報のアップデートが遅れてしまうことも少なくありません。一方、物上保証人が知らない間に主債務者の行動で時効が中断されてしまい、結果として物上保証人が提供した担保が差し押さえられる可能性もあります。
そのため物上保証人や主債務者は早めに連携して、借金問題に詳しい弁護士などへ相談することが大切です。
代表弁護士:田中 健太郎 先生
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