~消滅時効の援用で失敗しないために知っておきたいこと~
借金には時効がある!
法律で決められた時効期間をすぎれば、「時効の援用」という手続きをすることで、借金の返済義務をなくすことができます。「時効の援用」とは時効の完成によって、利益を得る人(債務者)が、時効の完成を主張することです。手続きについてある程度の知識は必要ですが、最近は検索すればすぐに情報が手に入りますし、手続きをすべて代行してくれる機関もあります。古い借金の返済に困っている方は、ぜひ時効の援用手続きを検討してみてはいかがでしょうか。
借金の返済義務を無くすことができる手続きを時効援用と言いますが、条件を満たしていなかったことで失敗するケースが少なくありません。参考のために、ありがちな失敗実例を紹介します。
借金に対する時効の援用は成功すれば借金が帳消しになりますが、当然ながら失敗することもあります。特に、法的知識のないまま自分でやろうとして失敗するパターンとして、以下のようなケースが目立ちます。
よく調べればわかるようなことでも、間違いやすかったり、簡単には入手できない情報があったり、個人ではなかなか一筋縄にはいきません。
一方、相手となる債権者は、多くの場合プロの金融業者。時効を成立させないためのノウハウを持っています。
手間が掛かるからと言って細かい所をないがしろにせず、絶対に失敗しないように情報収集に努めてください。
参考までに、具体的な時効援用の失敗ケースをご紹介します。
いずれも、失敗の原因は「時効の条件を満たしている」と早とちりしてしまったこと。
安易な判断は大けがのもとになります。繰り返しになりますが、くれぐれも事前調査を入念に行うことをおすすめします。
7年前から返済を滞納していて、その間に何度も引越をした末に、時効援用を成立させようと自分で書類を作って金融業者に送ったケースです。
案の定、業者からは時効が成立していないという手紙が届き、大慌てで専門家に相談をされたそう。
調べてみると、6年前に裁判所から実家に支払督促が届いていたのを放置していたことが原因でした。
この場合、通知から2週間以内に異議申立をする必要があったのをそのままにしたため、債権者の主張が通り時効期間が10年延長されてしまったわけです。
さらに、時効が成立していないにも関わらず手続きをしてしまったことから、ここでも時効期間は振り出しに戻ってしまいました。
こちらは債務者が自分で時効の援用をしようと消費者金融に書類を送ったところ、逆に350万円の請求を受けてしまったというケースです。
時効が成立していなかったのは中断があったからで、後日司法書士に相談したところ、あと3ヶ月待っていれば時効期間に達していたことがわかったそう。
このケースでは、自分なりに時効の起算日を確認したものの、不用意な少額の支払いで時効期間がリセットされていたことに気づかなかったのが原因です。
借金というのは、借入から一定期間経過すると消滅時効の対象になるというのは上記でも説明してきました。
これは債務者にとってはありがたい権利になりますが、債権者からすればかなり不利益な法律となってしまいます。そこで知っておきたいものがあるのですが、債権者には消滅時効を中断する権利というものがあるということです。
これは、債権者が時効の中断を行うと時効期間が振り出しに戻るものとなります。
例えば、5年で時効成立する借金を4年で時効中断をした場合、また1年目のカウントに戻るということです。具体的な時効中断の理由として、裁判上の請求というのが最も多く、債権者が裁判所を介して時効中断をしたということになってきます。他には、支払い催促の申し立てや、債務者側から和解及び調停の申し立てを行うこともあります。また、催告書によって時効中断を主張することも決してなくはありません。ちなみに、この催告書だけでは時効中断が成立するわけではありませんが、催告後に訴訟や支払い催告の措置を債権者が行うと時効中断が成立するケースもあります。
債務者の財産が差し押さえられて時効中断が成立されたケースもあったりします。
といったように、債権者側から行う時効中断の方法は様々ですが、一番はやはり裁判上の請求が断トツで多いのは間違いありません。そこで債務者がその借金を認めてしまえば当然のように時効は中断されます。時効は借入日、もしくは最後に借金を弁済してからの期間経過ですので、借金を弁済すれば時効期間のカウントはゼロに戻されてしまうということだけは頭に入れておきましょう。
時効成立前に時効援用の手続きを行い、債権者から時効の中断手続きを取られたケースということがあります。
基本中の基本になるのですが、すでに時効中断の措置が取られているのであれば、時効援用の手続きを行ったところで何も変わることはありません。
結局のところ、時効成立がされていない状態の援用には何のメリットもありませんので、きちんと時効期間の満了を確認してから援用の手続きをしなければならないのです。
とはいえ、時効成立がされていないのに、何かの手違いで援用が認められるというケースは決してゼロとは言えません。しかし、ほとんどは債務者よりも債権者の方が時効援用については熟知していることは間違いないでしょう。
ですので、時効成立前の援用手続きには何のメリットもないということなのです。時効期間がきちんと満了していること、そして債権者に時効中断の手続きが行われていないことを事前に確認してから援用の手続きを行わなければならないということです。
催告書が自宅に届き、それがきっかけで時効が中断されたと勘違いしたケースというのがあります。この催告書とは、債権者が債務者に借金の返済を促す通知のことになるのですが、これに関しては裁判所が一切介入していないため法的な効力は全くないのです。ですので、この催告書が債権者から通知されたところで、すぐに借金の時効が中断されるということはないということです。
この方はすぐに弁護士に相談をしたため事なきを得たのですが、実際に借金の時効が中断されたと思い、再度借金の返済を行うという人も少なからず存在してくるのです。ちなみに、債権者がこの催告書を通知する目的は、借金の返済を促すという目的が第一にありますが、債務者に自ら時効の中断をさせる狙いもあったりするのです。
少しの金額でも借金を返済した時点で時効は中断がされるのですが、これは債務者が債務を認めたという意味となります。詳しく説明しますと、名目上時効は身に覚えのない債務に対して発生するものであります。
要するに、債務者にとってわかっていない借金が存在されており、一定期間何の音沙汰もなかったので債権・債務を消滅させるというのが消滅時効の建前になるのです。
とはいえ、大体はどちら側も借金を理解していますので、建前上はわからないうちに一定期間経過したからこそ消滅されるものです。
そこで、少しでも借金を支払った時点で債務者は借金があることを理解しているという証拠になってしまうということです。少しでも支払ってしまうと時効は成立されませんので、催告書が届いたからといって絶対に借金を支払ってはいけないのです。
中には未返済分の借金を認めてしまったことにより、時効が中断されたというケースもあります。上記のケースは、催告書が届いたがために少額の借金を支払って時効の中断がされたというケースがありました。
今回は、違う手段で借金を認めてしまい、時効の中断がなされてしまったというケースになります。
時効というのは、基本的に債務者の身に覚えのない借金だから時効が適用されるのです。もちろん、本当に身に覚えのない借金が降りかかってくる人も中にはいるでしょう。しかし、それをいつまでも残しておくと根拠のよくわからない借金が増えていってしまうのです。そこで、一定期間経過した借金を自動消滅させることによって、この借金を整理しているということです。
本来の時効の目的というのは、債務者を助けるためだけでなく、よくわからない借金を整理するということになります。ですので、時効が成立しているのであれば、債務者がきちんと把握している借金については1円も支払う必要がないのです。
そのため、債務者が認めてしまうと消滅時効の対象にはならないということです。要するに、未返済の借金も何かしらの手段で認めた時点で、時効は中断されてしまいます。
債務名義を取られたことにより、時効の援用が失敗してしまったというケースがあります。ちなみに、債務名義とは債務者の財産差し押さえができる権利のことを言います。債務名義には「確定判決」、「仮執行宣言付き判決」、「仮執行宣言付き支払い催促」、「和解調停調書」、「公正証書」などが存在しており、全て債権者が債務者の財産に強制執行を加えるためのもとなります。
ここで知っておかなければならないことに、債務名義を取られると財産を差し押さえられるだけでなく、時効までの期間も延びてしまうということです。債務名義を取られてしまうと時効が10年も伸びてしまい、時効援用に関してはほとんどといって活用することはできません。
しかし、民事裁判によって債権者は債務名義を取ることができるのですが、そのためには費用だけでなく根気も相当必要とされると言います。ということから、このように債務名義を取られる債務者というのは数十万円以上のそれなりに借金のある人がほとんどになってくるのでしょう。
そのため、債務名義を取られたほとんどの人は自己破産や債務整理へと陥ってしまうのです。できるだけ自己破産や債務整理といった手段は取りたくない人がほとんどでしょうから、万が一債務名義が取られた場合はすぐに弁護士へ相談した方がいいかと思われます。
といったように、時効援用で失敗しないためには、援用の流れと自分の状況を把握しておくことが大事です。
時効援用を失敗している人のほとんどは、この時効について何も知らないというのが共通して挙げられます。
借金をゼロにするということは、それなりに時効援用について勉強をしておかなければならないということなのです。
特集!時効の援用でまず相談したい頼れる専門機関リスト
弁護士費用 1社3万9,800円(※1)
弁護士費用 1社または2社の場合 11万円
※価格は、2021年10月の情報です。
※1.公式HPで価格の記載を確認できませんでした。