~消滅時効の援用で失敗しないために知っておきたいこと~
差し押さえとは、お金を貸している貸金業者や金融機関といった債権者が、お金を借りて返済を滞納している債務者に対して行う手続きです。手続きは裁判所を通して行われます。
債務者の給与や銀行預金を差し押さえられると、一定額を残し強制的に回収されます。家にある換金できるものや不動産も差し押さえの対象で、中には財産を調査するため裁判所の執行官が家に訪れるケースも。債務者が拒否しても止められません。差し押さえられて回収されたものは、借金の返済に当てられます。
債権者は財産の取り立てや競売で借金を回収するために、債権者は債務名義を取得して差し押さえ手続きをしています。よって、差し押さえ後は債務者が自由に財産を処分できません。
債権者は手続きをしないと差し押さえという強制執行はできません。差し押さえのような強制執行では、債務名義という公的機関が作成した文書が必要です。たとえば「確定判決」「仮執行宣言付判決」「和解調書」「調停調書」「執行認諾文言付公正証書」「仮執行宣言付支払督促」などが当てはまります。
差し押さえ対象になるのは、「給料」「銀行預金」「車や貴金属類などの換金できるもの」「不動産」などがあります。
手取り給与を差し押さえられても、すべて持っていかれるわけではありません。上限があり、33万円より上か以下かで変わります。
手取りが33万円以下なら、手取り1/4の金額が差し押さえられます。33万円以上なら、手取りから33万円差し引かれて残った分が、差し押さえられる金額です。ただし、その金額が手取りの1/4のほうが高いと、1/4が採用されます。給与ではボーナスも退職金も差し押さえも対象です。
たとえば手取り28万円なら1/4が採用されて7万円を差し押さえられます。手取り80万円なら33万円を超えた47万円が差し押さえられるのです。
預貯金や生命保険などの債権も差し押さえ対象です。給与では差し押さえ金額には上限がありますが預貯金は上限がありません。返済されていない残債分を差し押さえられます。
差し押さえがあると、一時的に口座からお金を引き出せなくなります。ただ差し押さえのための「債権差押命令」が銀行や郵便局などに送られた時点での預貯金が対象です。そのため、債権差押命令以降に入金した金額は差し押さえ対象ではないため引き出せます。
生命保険では「解約返戻金」「配当金」「満期金」「保険金請求権」などが差し押さえ対象です。債権者は生命保険の解約手続きもできます。
動産は不動産以外のものや財産です。ものは換金できるもので、たとえば、自動車やバイクや貴金属や骨董品が当てはまります。66万円以上の現金も対象です。ただし、あくまで債務者個人の名義のもので、債務者のものは対象にはなりません。
借金の滞納額が大きければ不動産も差し押さえ対象です。家や土地が当てはまります。とくに住宅ローンの滞納では対象になることが多いです。建物や土地に抵当権が設定されていれれば可能性が高くなります。給与、預貯金では回収がむずかしいと判断されると、不動産も対象になりがちです。
差し押さえ対象とは反対に、差し押さえされないものがいくつかあります。基本的に生活をしていく上で最低限必要なものは差し押さえを避けられます。
66万円以下の現金、生活上必要な衣服や寝具や家具、キッチン用品や畳や建具などが差押禁止動産です。
仏像や位牌といった礼拝や祭祀に直接供するもの、1ヶ月の生活に必要な食料や燃料、学業や業務に欠かせない道具や器具は差し押さえ対象になりません。実印や勲章も差押が禁止されています。
債権に関しては当てはまる法律で、差し押さえを禁止されています。
上記は差押禁止債権ですが、預貯金として預金口座に入れると差し押さえ対象になるケースがあります。差し押さえ対象にしたくないなら、裁判所に「差押範囲変更」を申し立てなければなりません。
公的給付金で差し押さえをされると生活ができないなどを立証すると、差し押さえが解除される場合もあります。ただ、多くの書類の準備が求められるため、弁護士といった法律の専門家に相談したほうがいいでしょう。
借金の返済義務がある人以外のものは、預貯金を含めて差し押さえはされません。配偶者や子供、同居人などの私物や預貯金や現金は差し押さえ対象外です。
ただ、差し押さえ時に執行官が債務者以外の私物を差し押さえる勘違いはありえます。その場合「第三者異議の訴え」を起こさなければなりません。また、不動産物件を差し押さえせ対象といっても賃貸は別です。賃貸物件は債務者が所有しているわけではないため関係ありません。
差し押さえをされるとどうなるのか不安な方もいるでしょう。当然、給与や預貯金や換金できるもの、金額が大きければ不動産を差し押さえられて借金の返済に回されますが、それ以外にも問題が発生します。差し押さえは「借金の返済を滞納し続けたら起きる」ものです。
借金の返済を滞納し続けたという点は、社会的信用に傷がつきます。社会的信用を損なうことで起きる問題は多いのです。
差し押さえをされるということは、借金の返済で滞納期間が2ヶ月以上経過しています。その時点で信用情報機関には事故情報が登録されている状態です。いわゆるブラックリストに載っているわけですから、クレジットカードは使えません。
信用情報機関は氏名や勤務先、借入残高、返済状況、延滞状況、債務整理や事故情報を管理する機関です。金融機関は信用情報もチェックしています。ブラックリストに載っているわけですから、金融機関も信用してくれません。クレジットカードが使えなくなるのもしかたないことです。
クレジットカード関連でいえば、子供が「クレジットカードを作りたくて保証人になってくれ」と頼んできてもなれません。
差し押さえをされると勤務先に「債権差押通知」が届くことになります。勤務先は債務者に給与を支払っているため、第三債権者という立場になり、まったく無関係とはいえないのです。
給与の差し押さえでは、給与の33万円以上や1/4の分は一旦債務者に支払われる形になりません。債務者である従業員の代わりに勤務先が債権者にお金を支払う形になります。
勤務先、とくに経理担当は気を使う上に面倒な手続きを求められるため、勤務先の人間関係にもネガティブな影響を与えます。社会的信用に大きなキズがつくと考えておきましょう。
借金にも時効があります。最後に返済した日から最低5年以上経過したとき、時効の援用をすると返済義務がなくなる消滅時効が成立します。時効の援用は債権者に対し「消滅時効の制度を利用するよ」という意思を、手続きを通して示すのです。
ただし、消滅時効が成立するハードルは高く簡単ではありません。最後の返済期日から5年経過をクリアするのがむずかしいのです。理由は債権者が差し押さえや裁判所を通じて請求するといった、回収するための法的手段をすると、時効は中断されます。単純に中断では終わらず、時効期間が0に戻ることに。差し押さえをされると、最低5年~10年は債権者に対し消滅時効は適用できません。
不動産が差し押さえられると「競売開始決定通知」が届く場合があります。債権者の申し立てで不動産が競売になることを裁判所が受理したことを知らせる書面です。競売開始決定通知の次は「現況調査に関する通知」が届きます。現況調査通知には、裁判所の執行官と不動産鑑定士が不動産を調査するため立ち入る日時が記載されているので、必ず確認するようにしましょう。
予告日時に訪れた執行官や不動産鑑定士は、不動産の状況を確認し、建物、部屋、自動車を写真撮影します。「来ないでくれ」と伝えても無理で、執行官は強制的に現況調査ができます。執行官が来れば、近所の人も不審に思うでしょう。競売にかけられる状況を周囲に知られる可能性があります。
現況調査後、不動産、自動車、バイクなど差し押さえられたものは競売にかけられます。競売がはじまる前に「機関入札通知書」が届きますが、内容は入札期間と、入札がはじまる日を示す開札日です。
競売と入札がはじまれば「競売を取り下げてくれ」といってもできません。家が競売にかけられた場合、債務者は落札者に「はやく立ち退いて」と要請されれば出ていくしかないのです。
競売による不動産や動産が売れて発生したお金は債権者が回収します。家や土地だとしても債務者の手元にお金はほとんど残らないのが実情です。
ただ、差し押さえ、開札まで、半年~1年かかるのが一般的ですからその前に、債務整理、任意売却などをしたほうがいいでしょう。
差し押さえされるかもしれないと思えば、対策をしたくなるもの。たとえば、預貯金や現金を隠したり家や自動車を壊したり、親戚に一旦譲ってあとで返してもらうなどをすれば犯罪と判断されるリスクがあります。
差し押さえられそうな財産を隠す、壊す、知人に譲るのはリスクが大きいです。「刑法第96条2項の強制執行妨害目的財産損壊罪」にあたりかねません。強制執行妨害目的財産損壊罪は、3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金どちらか一方、または両方科せられる可能性があります。
差し押さえ日時について事前告知はありません。告知するとその前に財産を隠す、壊す、知人に譲ることは想定できるからです。「差し押さえされる前に金目のものは売ってしまって隠せばいい」ことが許されるなら、債権者はお金を回収できません。だからこそ強制執行妨害目的財産損壊等罪があるのです。
実際のところ、口座を隠すのは困難です。「債権者に秘密にしている口座があるから安心」というわけにはいきません。債権者が債務者の口座を調べる方法があるからです。たとえば、弁護士に調査依頼を出す方法があります。
弁護士は弁護士会照会制度を利用し、証拠や資料を集めることができるので、その権利を行使して事件に関する証拠、資料、事実調査のため公務所や公私の団体に必要事項の報告を求められます。
弁護士法第23条2項でも認められており、照会を受けた団体は報告義務があります。また、民事執行法もあり、債務者以外の銀行、信用金庫なども含めた第三者から債務者情報を提供してもらえる方法も。預貯金口座、不動産や給与や保有株式といった情報まで提供可能です。つまり債権者がその気になれば、預貯金口座から勤務先まですべてわかります。そのため隠しても簡単にばれるのです。
骨董品や貴金属といった換金できそうなものには、シールと呼ばれる封印票が貼られます。「気分が悪い」と債務者が勝手にはがすのは問題です。「刑法第96条の封印等破棄罪」に問われるリスクがあります。3年以下の懲役もしくは250万円の罰金か両方のため厳しい罪です。
債権者の立場となったとき、債務者が借金の返済ができず滞納ばかりしていたらどんな対応ができるのでしょうか?その点を解説します。
自力救済という方法がありますが、日本では禁止されています。自力救済とは裁判所で手続きをしないまま、債権者が債務者の家に乗り込み、お金になるようなものを強引に持ち帰り換金する、通帳と印鑑を取って預金を引き出す方法です。借金の滞納が長期にあれば、債務者への怒りも沸き立って実行したくなる方もいるかもしれませんが犯罪と判断されます。債権者だとしても許されません。
債権を回収するには法的手続きが必要です。民事訴訟で手続きを請求、債務名義を取得し、強制執行手続きをして回収すれば犯罪になりません。差し押さえは強制執行手続きのひとつなのです。
差し押さえに至るまでの流れを紹介します。
訴訟手続きまでに書面で督促をします。督促とは「約束の期限が過ぎました。早くお金を返済してください」という意思を伝えるもの。あくまでも返済をうながすようなもので、法律的に「督促をしても返済しないならすぐに差し押さえができる」というものではありません。
ただし、督促を無視すると、遅延損害金、通常以上の利息、一括請求、差し押さえのリスクが高まります。また、督促を受けた債務者が「必ず返済します」と意思表示をすると、その時点から6ヶ月経過しないと消滅時効が完成しません。消滅時効を防ぐという点で法律的な意味があります。
債務者が督促も無視し、返済も期待できないようなら訴訟手続という段階に入ります。訴訟手続をして、債務名義を取得する流れです。債務名義を取得すると、差し押さえのように強制的に回収することができるようになります。
債務名義を取得したら強制執行の手続きです。裁判所に債務名義や必要な書類を提出して、強制執行の申し立てをします。認められると差し押さえの流れです。
債務者の立場だと絶対に差し押さえは回避したいところです。実は回避する方法があるためご紹介します。
債権者に「返済の意思がある」ことを示します。とくに差し押さえ通知書が届いているなら、状況はかなり厳しいです。債権者の窓口へ行き、返済したいことを伝えてください。債権者が申し立てをする前に相談することが大切です。
債務整理をします。任意整理、個人再生、自己破産の3つです。
任意整理は債権者と交渉し、毎月、無理なく支払える返済額を設定して完済を目指します。将来の利息分がカットされるのもメリットです。
個人再生は裁判所を通して行う債務整理です。借金を最大90%まで減額できます。ただし任意整理より規制はかかるのが注意点です。
自己破産は財産以外すべてを換金して返済します。返済できない分は返済義務が免除されます。
任意整理は大幅に返済額を減らせませんが、規制もないですし手続きが簡単で、たとえ同居する家族にもばれにくい債務整理です。自己破産で借金はなくなりますが家族にばれる可能性が高いです。
税金、年金、健康保険などの滞納では、自己破産をしても返済義務があります。非免責権といわれるもので、これらの滞納で差し押さえられることもあります。
納税の猶予と換価の猶予という2つの制度があります。納税したくてもできず延滞した納税者の負担を一時的に軽くするものです。しかし滞納分の税金の支払いはあり続けます。
納税の猶予は、1年間納税が猶予されます。利用可能期間は1年間で、納税猶予、分割支払もでき、延滞税の免除も可能です。生活困難、台納税と同等以上に換算できる財産を持っており、納税の医師があると利用できます。税務署に相談し、申請書を提出して承認されると利用できる流れです。また、利用しても状況によっては1年間猶予期間の延長ができます。
換価の猶予はす差し押さえを受けている滞納者が対象です。差し押さえがはじまった時点で利用できます。滞納分の税金を分割返済する制度で、納税の猶予より条件のハードルは低いです。
利用可能期間は1年以内で、差し押さえの猶予や延滞税の一部免除、状況次第で差し押さえが免除されます。利用条件は生活困難、滞納税と同等以上の換算できる財産を保有している、納税の医師、納税の猶予を利用しても納税がむずかしいなどです。また、滞納した税金支払い期日から半年以上の申請も利用条件に含まれています。
納税猶予と同じく税務署に相談し、申請書を提出・承認されれば利用できます。差し押さえを受けて必要最低限の生活の営みがむずかしい場合でも、差し押さえが解除されるケースがあります。
e-Gov法令検索|民事執行法第152条
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e-Gov法令検索|国税徴収法
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(https://www.effata.co.jp/saimu/saimuseiri-23304.html)
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