~消滅時効の援用で失敗しないために知っておきたいこと~
強制執行されるとどうなるか考えたことはありますか? 借金の返済が滞っても、法治国家である日本において債権者は自身の手で相手方の財産を強制的に回収できません。
そのため、債権者は話し合いの場を設けて公正証書を取得したり、裁判所に訴えたりするなどして債務者からの債権回収を試みるでしょう。
そして、勝訴判決を得るなどしても相手方が応じない場合、債権者は裁判所に強制執行を求めることで、回収を図ろうとするでしょう。
裁判所の確定判決、和解調書、調停調書、もしくは強制執行認諾文言付き公正証書などの文書があれば、債権者は裁判所に強制執行の申し立てを行うことができます。
裁判所は債務者の財産を差し押さえてお金に換え(換価)、債権者に分配(配当)するなどして、債権者に債権を回収させようとします。
この記事では、強制執行までの流れや周囲への影響、強制執行を回避する方法などをまとめました。
強制執行は債務者に差し押さえの対象となる財産があることが前提であり、債権者は債務者の財産を調査したうえで、動産であれば保管場所を記載するなどして裁判所に申し立てをしなければなりません。
差押さえの対象となるのは、不動産、預貯金、株式や有価証券、高額な動産、未回収の売掛金などです。差押えられる財産には制限があり、66万円以下の現金や生活必需品など一部の財産は差押えができません。
動産の調査の場合、居住地が分かれば現地を訪れ目視で確認できるかもしれません。興信所などに依頼することも可能ですが、興信所には特別な権限はありません。債権回収を請け負う弁護士に依頼することが想定されます。
債権者は、不動産であれば法務局から、預貯金については勝訴判決に基づき弁護士に依頼して債務者の取引先の銀行などを調査します。債権者が確定判決などの債務名義を持っていれば、後述する財産開示制度を利用して債務者の財産をすべて開示させることができます。
個人の債務者の場合、最初に給与が差押えの候補としてあがります。その理由は、預貯金などがなくても働いていれば毎月の収入があり、確実に借金を回収できると考えられるからです。
生活に必要な動産を差し押さえる前に、給与から払ってもらうという考え方には正当性があり、また換価の必要もありません。
ただし、給与の差押えでは、上限金額が設定されています。上限金額は、手取り額が月額44万円以下の場合は手取り額の4分の1。手取り額が月額44万円を超える場合は手取り額から33万円を控除した金額です。
この差し押さえは、請求金額の全額が回収されるまで、毎月続きます。
住宅ローンやオートローンなど担保が設定されている借金の場合は、土地や建物、車など担保になっている物件が差押えや換価処分の対象になります。
借金の滞納が続いた場合、債権者から内容証明郵便などで借金の返済を求める督促が行なわれます。債権が債権回収業者に譲渡されていた場合は、もともとの債権者からではなく、債権回収業者から連絡が来ます。この段階で返済すれば法的処置を回避できるため、早めに対処するようにしましょう。
督促を無視し続けると、債権者から裁判を起こされることがあります。提訴されると裁判所から訴状と第1回口頭弁論の案内が届くため、支払い義務に関して反論がある場合は口頭弁論が行なわれる前に答弁書を裁判所に提出しなければいけません。
また、裁判の間に債務者の財産が流出して強制執行が不可能または難しくなるのを防ぐため、仮差押えが行なわれることもあり。仮差押えが行なわれた場合、対象となる財産には差押えが確定するまで次のような処分が行なわれます。
裁判で債権者の申し立てが認められて敗訴となった場合、裁判所から債務の支払いを命じられます。上訴期間内に不服申し立てをしなければ判決内容が確定となり、債権者は強制執行の権利を得ます。裁判に出席しなければ、強制執行から逃げられると考えている人は要注意。口頭弁論期日に出席せず反論の答弁書の提出もなかった場合、債権者の請求を認めたものとされ、債務者の敗訴となります。
強制執行には差押えの対象になる財産を特定しなければいけないため、財産開示手続が行なわれることがあります。財産開示手続が実施されると債務者は裁判所に出頭し、自らの所有する財産について陳述しなければいけません。財産開示期日に正当な理由なしで欠席したり、陳述を拒んだり、虚偽の陳述を行なったりした場合は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるので注意しましょう。
※参照元:船橋シーアクト法律事務所
(https://cact-lo.com/media/c-005/)
債権者の勝訴が確定したら、債権者は裁判所に強制執行の開始を申し立てます。強制執行に対して、債務者が異議申し立てを行なうことは可能です。ただ、判決が確定した当時の事情から何も変化がない場合は、異議申し立てが認められず、強制執行の手続きが進められます。
強制執行で差押えられた財産は、民事執行法で定められた手続きに従い、借金の返済に充てるために売却で現金化されます。借金の返済に充てたあとに残額があった場合は、債務者に返還されます。
強制執行で差押えられるのは、債務者本人が所有している財産のみです。そのため、家族名義の不動産や預金などが差押えられることはありません。ただ、自宅の土地や建物、車などが債務者の名義で差押えとなってしまった場合、家族の生活にも影響が出てしまうことは避けられないでしょう。
強制執行で給与が差押えとなる場合、裁判所から勤務先に債権差押命令正本が送られ、債務者に対して給与額面の4分の1を上限とする額の支払いが禁止されます。
※参照元:アディーレ法律事務所 Lega-Life Lab
(https://www.adire.jp/lega-life-lab/what-happens-to-salary-foreclosure937/)
勤務先に借金を滞納していた事実が知られてしまうことになるため、会社に居づらくなってしまったり、仕事上の立場が悪くなったりしてしまうなどの影響が生じかねません。
強制執行を回避する根本的な解決策は、滞納している借金を返済することです。支払期日を忘れて滞納している状態であれば、法的処置を取られる前に返済しましょう。
返済する資金をすぐに用意できない場合は、返済を待ってもらえないか債権者に相談してみましょう。債権者にとっても裁判を起こすのは費用がかかるため、相談に応じてもらえる可能性があります。債権者に相談する際は、いつまでに返済できるのかを明確に示すことが大切です。
強制執行では銀行口座が差押えの対象になりやすいため、強制執行される前に口座を解約して現金で持っておくと、差押えの対象財産としての特定が難しくなります。ただし、あくまでも一時しのぎに過ぎず、財産開示手続きが行なわれた場合は、現金を含めた財産の状況について陳述しなければいけません。
借金の返済がどうしても難しい場合は、弁護士や司法書士などに債務整理の相談をしましょう。債務整理とは、借金を減額または免除する法的手続きのことです。何社からもお金を借りている多重債務の状態であれば、債務整理をすることで借金の負担を軽減することができます。
債務整理の方法としては「自己破産」「個人再生」「任意整理」があり、それぞれでメリット・デメリットが異なります。どの方法が自分に合っているのかを含めて、弁護士や司法書士に相談するとよいでしょう。
借金の返済が難しいからと債権者からの督促を放置し続けた場合、強制執行によって財産を取り上げられ、家族との関係や仕事にも支障をきたす可能性があります。借金の督促が続く日々は精神的に大きなストレスがかかり、正常な判断ができない状態にもなりかねないため、法的処置を取られる前に弁護士や司法書士などの専門家を頼りましょう。
専門家に依頼することで債権者とのやり取りや面倒な手続きを任せられ、精神的に楽になることで今後の生活についても前向きに考えられるようになります。相談だけなら無料で応じてくれるところも多いため、借金問題を解決する一歩として相談してみてはいかがでしょうか。
代表弁護士:田中 健太郎 先生
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