~消滅時効の援用で失敗しないために知っておきたいこと~
非免責債権とは、自己破産の手続きをしても支払い義務が免除にならない債権です。自己破産を行うと、それまで抱えていた負債の支払い義務はなくなりますが、非免責債権と呼ばれる一部の債権については支払い義務が残ります。
そもそも自己破産とは、財産や収入が不足して借金を返済できる見込みがないことを裁判所に認めてもらい、法律上、借金の支払い義務を免除してもらえる手続きです。
しかし、自己破産では支払い義務は免除されるものとそうでないものがあります。
それが「非免責債権」で、自己破産で免責許可決定が出ても責任を免れない、として、破産法によって定められています。
債という字には「借金」または「果たすべき約束」という意味があります。つまり、債権とは、借金の返済を求める権利のことで、それに対して債務は、特定の人に対する義務を指しています。
お金を貸し借りするとき、お金を貸した人が「債権者」となり、お金を借りた人が「債務者」と呼ばれるのは、このような権利と義務の関係からです。
納税は、国民の3大義務のひとつです。税金を納める義務は、納税者の公平性を保つ上で欠かせません。そのため、自己破産によって借金の支払い義務は免れても、納税や公的保障制度などの保険料・年金は非免責債権となり、支払い義務を免れることはできません。
非免責債権と似たような概念に「免責不許可事由」があります。
免責不許可事由とは、免責手続きを行っても免責許可決定がでない可能性のある事情を指しており、非免責債権とは性質が異なります。
通常、自己破産では、破産の申立と同時に免責手続きの申立も行います。破産手続きが破産者の財産を債権者に平等に配当する手続きであるのに対し、免責手続きは財産を債権者に配当したあとに残ってしまった債務を「免責するか否か」を判断する手続きです。
厳密に言うと、破産手続きと免責手続きは同じではなく、自己破産の手続きをした場合でも、事情によっては免責が認められない場合があります。
例えば、ギャンブルや浪費などが原因で借金を負った場合などで、これらは免責不許可事由に該当します。
免責不許可事由があると、自己破産の手続きをしても免責が許可されません。そのため、個人再生や任意整理といった方法で対応するのが一般的です。
また、破産者が知りながら故意に債権者名簿に記載しなかった場合も、免責不許可事由にあたります。債権者漏れが発覚すると免責不許可となり、非免責債権以外の債権も含めて借金がそのまま残ることになります。誤って債権者名簿に載せ忘れてしまった場合はその限りではありませんが、十分な注意が必要です。
以下のようなものは、非免責債権に該当します。これらは、自己破産をした場合であっても免責されません。よって、借金の整理後も支払い義務が生じます。
所得税や住民税などの税金を納めるのは国民の義務で、社会の公正性を保つ上で欠かせないものとされています。支払いを怠ると、短期間で財産を差し押さえられてしまう可能性があるため注意が必要です。所得税や住民税のほか、贈与税や相続税、固定資産税、自動車税なども非免責債権にあたります。
公共料金のうち、下水道料金のみが非免責債権となり、上水道料金や電気、ガスなどの使用料金は非免責債権にあたりません。そのため、破産手続き後に免責許可決定が出れば、下水道以外の公共料金の支払い義務は免除されます。
下水道料金が非免責債権となっているのは、下水道が公衆衛生のために設けられた設備であり、上水道よりも公益性が高いとされているためです。
税金などの公租公課と同様、国民健康保険の保険料や国民年金保険料などは「租税等の請求権」に該当します。
国税徴収法によって徴収できると定められており、行政上の強制徴収の対象となっています。そのため、自己破産しても免責の対象とはなりません。
夫婦や親子などの家族間の義務についても非免責債権にあたります。そのため、離婚時の慰謝料や離婚後の養育費の支払い義務を免除されることはありません。約束通りに支払わない場合、財産差押えなどの強制執行をされることがあります。
ただ、元配偶者と交渉して合意を得たり家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てたりした場合、減額できる可能性はあります。
損害賠償請求権は非免責債権にあたる場合があります。非免責債権に該当する損害賠償請求権は、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づくもの」または「破産者が故意または重過失で加えた生命・身体を害する不法行為に基づくもの」です。
悪意で加えた不法行為とは、業務上横領や詐欺などがあたり、故意または重過失で加えた生命・身体を害する不法行為には、不注意によって起こった交通事故などがあたります。
「罰金等の請求権」も非免責債権にあたります。罰金等の請求権とは、罰金や科料、刑事訴訟費用、追徴金、過料などで、制裁的な側面を持っている金銭です。これらは自己破産で免責するのは適切でないと考えられており、支払いを免れることはできません。
スピード違反の反則金は、行政上の秩序罰「過料」の扱いとなり、非免責債権となります。
自己破産するほどの段階にあると、どうしても支払えない状況になっているケースも少なくないでしょう。しかし、支払いを怠ると、短期間で給与などの財産を差し押さえられてしまう可能性があります。
経済的な理由でどうしても非免責債権を支払えないときは、以下で紹介する方法でしっかりと対処しましょう。
非免責債権そのものは債務整理できませんが、他の債務を整理できれば借金を減らせる可能性があります。
破産手続きを取る前に、債務整理によって借金問題を解決できるかを検討しましょう。債務整理には、自己破産以外にも任意整理や個人再生といった方法があります。借金がなくなるわけではありませんが、支払い利息をカットしたり支払額を減額できたりする可能性があるので弁護士などに相談してみてはいかがでしょうか。
税金などの公租公課が支払えなくなったときは、早めに市区町村の相談窓口や税務署に出向いて相談しましょう。支払えない事情について話せば、どのように対処するのが適切かアドバイスしてくれます。
生活の状況によっては、分割払いへの変更や支払い猶予、延滞金の免除など、柔軟に対応してくれる可能性があるでしょう。
「現在は支払いが苦しいが、なんとか返済していく意思がある」と誠意を持って示すことが大切です。一度相談するだけでも自治体や税務署の心象が大きく変わりますので、なるべく早めに行動するようにしてください。
養育費は、まず当事者間で話し合いの場を持つことからはじまります。元配偶者に相談し、合意ができれば減額できるでしょう。
もし、合意を得られない場合でも、家庭裁判所に申し立てを行えば減額できる可能性がありますが、裁判所の調停委員が間に入って調停を行うためある程度の時間は必要です。調停で合意できない場合は審判となります。
家庭裁判所で養育費が減額できるかどうかは、置かれている状況や年収など状況によって異なります。裁判にまで至らず話し合いで解決できるよう、まずは誠意を持って元配偶者に相談してみてはいかがでしょうか。
税金などの公租公課や子どもの養育費が非免責債権であることは明確ですが、賠償金の場合、対象となる不法行為が悪意によるものなのか、故意か重過失かなど、素人が判断するのは容易ではありません。
抱えている損害賠償請求が非免責債権かどうか分からない場合は、弁護士などの法律の専門家に相談して確認しましょう。
代表弁護士:田中 健太郎 先生
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